築年数が経過したビルでも、一棟全体を見直すことで、オフィスやテナントビル、ホテル、複合施設など、新しい使い方ができる場合があります。部分的な改修ではなく、外観や共用部、各フロア、設備などをまとめて計画できるのも、一棟を対象としたリノベーションの特徴です。
ここでは、既存のビルを生かしながら建物全体の使い方を変えたリノベーション事例を紹介します。あわせて、ビルを一棟改修するメリットや注意点についても解説します。
代官山にあった築40年のRC造オフィスビルを、一棟丸ごと改修して複合テナントビル「SodaCCo」へ転用した事例です。もともとは一企業が本社として使用していた建物でした。
改修後は、クリエイター向けのシェアアトリエをはじめ、子どもの知育をテーマとした施設やカフェ、学童保育施設、イベントスペースなどを配置。建物をきれいにするだけでなく、地域の特性を踏まえてビル全体の役割を再設計しています。
既存のオフィス用途にこだわらず、利用する人や地域との関係まで考えて用途を組み直した、一棟を対象としたリノベーションならではの事例です。
東京・内神田にあった築古オフィスビルを、シェアアパートメント、シェアオフィス、シェアスペースを備えた複合施設「the C」へ転用した事例です。
従来の建物は、階高が低く1フロアの面積も小さいことなどから、一般的なオフィスとして活用し続けるには課題がありました。また、建て替えた場合には従来より床面積が減ることも想定されていました。
そこで既存建物を生かしながら、オフィスだけではなく住居や交流スペースを組み合わせる形へ転換。建物の弱点を単純に解消するのではなく、既存ビルの条件に合った新しい用途をつくっています。
築古ビルでは、「古いから建て替える」と決める前に、現在の構造や立地を生かせる用途がないか検討することも重要です。
住居を組み合わせる一棟改修を検討する場合は、住まいに転用した事例も参考になります。
1988年に建てられた地上6階建てのオフィスビルを、飲食店を併設したホテル「LYURO東京清澄」へリノベーションした事例です。
建物が隅田川に面しているという立地を生かし、ホテルとして利用するだけでなく、川沿いには人が過ごせるオープンスペースも設けられました。
建物単体の改修だけでなく、その土地ならではの特徴まで活用して新たな価値を加えている点が特徴です。オフィスとして使われていたビルでも、建物の条件や周辺環境によっては別の用途へ転換できる可能性があります。
ビルを一棟改修する場合は、内装だけでなく、外観、共用部、設備、構造、用途など複数の要素をまとめて検討する必要があります。そのため、ビル全体を見ながら改修計画を立てられる会社を選ぶことが重要です。
また、空室対策を目的とする場合と、自社利用を目的とする場合では、必要な工事や計画の立て方も異なります。どのようなビルにしたいのかを整理したうえで、目的に合ったリノベーション会社を比較しましょう。
ビルを一棟まとめてリノベーションすると、老朽化した部分を修繕するだけでなく、建物全体の使い方や印象を見直せます。
フロア単位の改修では、既存の間取りや用途を大きく変えにくい場合があります。一方、一棟全体を対象にすると、各階の役割や利用者の動線、共用スペースの配置まで含めて検討できます。
たとえば、オフィスだけだった建物に店舗やラウンジを加えたり、一部を住居に変更したりするなど、建物全体をひとつの施設として考え直せることがメリットです。
空室が発生しているビルでは、現在の用途をそのまま続けることだけを前提にせず、周辺エリアで求められている使い方に合わせて再構成する方法もあります。
築年数が経過したビルでは、室内だけを改修しても、外観やエントランス、廊下、トイレなどに古さが残ることがあります。テナントが利用するビルの場合、専有部だけでなく共用部の印象も物件選びに影響する要素です。
一棟を対象とした改修であれば、外装やエントランス、各フロアの内装だけでなく、空調や給排水、照明などの設備についてもまとめて状態を確認できます。
デザインと設備を別々に考えるのではなく、今後の利用方法に合わせて建物全体を整えられることが、一棟単位で計画する利点です。
古くなった部分を新しくすることだけが、ビルのリノベーションではありません。現在のテナントニーズや周辺環境を踏まえ、設備や用途、デザインを見直すことで、物件としての競争力を高める方法もあります。
たとえば、一般的なオフィスをシェアオフィスへ変える、使われていない場所を共用スペースとして活用するなど、建物の特徴に合わせた改修が考えられます。
ただし、リノベーションをすれば必ず賃料や稼働率が上がるわけではありません。誰に利用してもらうのかを明確にしたうえで、改修内容を決めることが重要です。
収益や資産価値をどう高めるかを具体化したい方は、バリューアップの考え方も確認してください。
参照元:ヤシマ工業公式サイト(https://www.yashima-re.co.jp/renovation-saisei/)
建て替えでは既存建物を解体して新しく建築しますが、リノベーションでは利用可能な構造や部分を残しながら改修を進めます。
既存建物ならではの外観や構造、立地条件を生かした計画ができる場合もあります。事例のように、従来はオフィスだった建物を複合施設やホテルへ変えるなど、用途そのものを見直すことも選択肢です。
一方で、建物の状態によっては大規模な補修や耐震改修などが必要になる可能性があります。リノベーションが適しているかどうかは、事前調査を行ったうえで判断する必要があります。
一棟全体を改修する場合は工事範囲が広くなるため、デザインや間取りだけで判断せず、建物の状態や法令、工事後の運用まで確認する必要があります。
築年数が同じビルでも、これまでの修繕状況や利用方法によって劣化の程度は異なります。
外観からは問題がないように見えても、配管や設備、躯体などに補修が必要な箇所が見つかる場合があります。また、解体して初めて確認できる部分もあるため、工事前の調査だけですべてを把握できるとは限りません。
最初から改修内容を決めるのではなく、建物の現状を確認してから工事範囲を整理することが大切です。
参照元:SHUKEN Re公式サイト(https://shuken-renovation.jp/yomimono/column/no531/)
築年数が経過したビルでは、耐震性能についても確認しておきましょう。特に古い耐震基準で建築された建物では、耐震診断や補強の検討が必要になる場合があります。
ただし、古い建物だから一律に耐震性が不足しているとは判断できません。過去に耐震補強を行っている建物もあるため、竣工時期だけでなく、改修履歴や現在の状態まで確認します。
耐震補強が必要な場合は、内装や外装のリノベーションとあわせて計画することで、工事全体を整理しやすくなります。
既存ビルの耐震性に不安がある場合は、補強の検討ポイントを先に整理しておくと、改修の範囲を考えやすくなります。
オフィスをホテルや住宅、店舗などへ変更する場合は、用途変更に伴う法令上の確認が必要になることがあります。
避難経路や採光、換気、防火設備など、用途によって求められる条件は異なります。そのため、「空いているから別の用途にする」と単純に決められるものではありません。
用途を大きく変える場合は、計画の初期段階から建築士などの専門家に確認することが重要です。
収益物件としてビルを所有している場合は、工事が完成すれば終わりではありません。どのようなテナントを募集するのか、どの程度の賃料を想定するのか、共用部をどのように管理するのかなど、完成後の運用も考えておく必要があります。
ターゲットが曖昧なまま内装だけを新しくしても、入居者のニーズと合わなければ空室対策につながらない可能性があります。
一棟全体を改修する場合は、工事計画とテナント募集・運営計画を切り離さずに検討することがポイントです。
ビル一棟をリノベーションすることで、外観や内装を新しくするだけでなく、建物全体の用途や利用方法を見直せます。実際に、オフィスビルを複合テナントビルや住居を含む複合施設、ホテルへ転用した事例もあります。
一方、どのビルでも同じような改修ができるわけではありません。構造や設備の状態、耐震性能、法規制、周辺エリアの需要などによって、適した方法は変わります。
現在の建物にどのような価値を残せるのか、誰にどのように使ってもらいたいのかを整理することが、改修計画を考える第一歩です。
ビルの老朽化や空室に悩んでいる場合は、部分的なビルリフォームだけでなく、一棟全体を見直すリノベーションやビルリニューアルも含めて比較するとよいでしょう。